東京高等裁判所 昭和28年(ネ)2330号 判決
ところが被控訴人は処理法第二条による優先賃借申出は賃借権の設定それ自体についての意思表示であり、この意思表示は賃借条件又は賃借物引渡の意思表示をふくまないから、賃借権設定後即時に賃借物を使用収益することができなくとも将来使用収益なしうる蓋然性が存する以上、賃借申出をなしうるものであり、将来における使用収益の不能が確定している場合においてのみ右申出ができないと解すべきものである、しかるに本件土地の接収は十年間の優先賃借期間満了まで存続することに確定していたのではなく、よつてこの賃借権による使用収益の不能が確定していたのではないから、被控訴人の本件賃借申出は有効であると主張する。
しかし、処理法第二条第三条第九条にかかげられる者に優先賃借申出権を与えたのは、戦災跡地、建物疎開跡地に建物を建築することを促進して住家等建物のふつていをやわらげようという趣旨にもとずくものであつて、それだからこそ、同法第二条第一項の但書や同法第七条の規定があるのである。したがつて、優先賃借申出当時権原により建物所有の目的で使用する者が現に存する以上、その使用が十年をこえて存続することが確定的でなくてもこの但書にあたると解すべきものであつて、被控訴人の主張はとうてい採用しがたい。